僕は魔道士? 第1話僕はウェイトレス?・パラレル編 シティエアポート区画
AM11:30 「第一小隊戦闘不能、救援を求めています。」 「第三小隊応答しろ、状況はどうなっているんだ?」 無線から入ってくる情報はどれも絶望的なものだった。 「隊長、このままでは閉じ込められている民間人が危険です。」 「くっ、回せる小隊は無いのか?」 部隊を率いる隊長の男性が聞くが、モニターに付いている部下達は首を振る。 「現在、中級魔道士が1人防いでくれているようですが・・・」 「相手は暴走してリミッターの外れたAIなんだぞ、何時まで持つか・・・」 暴走したAIは並みの軍隊や中級魔道士程度では相手にならない。 それに対応出来る者は・・・ 「魔道管理局からの返答は?上級魔道士の派遣をちゃんと依頼したんだろうな?」 隊長の問い掛けに外部との通信を担当している部下が答える。 「はい、もう少し待ってくれと先程連絡がありましたが・・・」 「まったく何をしてるんだあの連中は?どうせ偉そうな事を言って出てくる気なんて無いんだろうが。」 「あのよろしいでしょうか?」 「プライドばかり高くて、自分の事を優先しやがって。」 「あの、聞いてますか?」 「俺達下々の事なんぞ眼中に無いんだろうさ、これだから上級魔道士なんて・・」 「それはごもっともな話です、申し訳ありません。」 「・・・?」 隊長はようやく自分に話し掛けてくる存在に気付き、後ろを振り向いて固まってしまう。 そこに立っているのは1人の女性だった、ただし一般人では無かった。 第一、民間人が軍の指令車に入ってこれる筈がない、いやそもそもここまで来られない。エアポートの周りは厳重に封鎖されているのだから。 つまり彼女がここまで来れたということは、それだけの権限を持っている事の証なのだ。 「あ、あんたは・・・魔道士か?」 いや聞く必要など無いだろう、何しろその女性は、魔道士が身に着ける通称『BU』、バトルユニホーム姿で手には青い光球を付けた杖を持っているのだから。 それを認識したとたん隊長は顔を真っ青にする。 何故ならここまで来れるとしたら、彼女は確実に上級魔道士という事になる。 先程隊長自身が言っていた通り、上級魔道士にはプライドが高い者が多い。 その眼前で罵倒するような事を言ったのだ、どんな報復を受けるか分かったものでは無い。 一部隊の隊長の首を飛ばすくらい朝飯前だ、連中はそれだけの力を、魔道だけでなく権力という意味でも持っているのだ。 「はい、上級魔道士の木村夏樹です、魔道管理局より要請を受けて参りました。」 だがその女性魔道士は、隊長の言葉など気にしていないようだった、声にも表情にも変化は無い。 「ご、ご苦労様です上級魔道士殿、この度は・・・」 「挨拶は後回しにしましょう、状況を教えて頂けますか?」 社交辞令を言おうとした隊長を遮り、女性魔道士は状況を尋ねてくる。 「ああ。本日AM8:00にエアポートに暴走したAIが進入、搭乗予定の民間人40名が逃げ遅れて閉じ込められている。」 モニターを使い隊長は女性魔道士に状況を説明する。 「エアポートの警備隊が向かったんだが、AIの攻撃の為、大きな損害を受けて撤退させられた。」 通常の警備隊では暴走したAI相手では相手にならない。 「こっちの特殊部隊を送り込んだが、結果は同じだった。」 女性魔道士はじっとモニターを見つめて考え込んでいる。 「閉じ込められ方々が居るのがこの区画ですね。」 やがて女性魔道士が指をモニター上の一点に示し、訊いてくる。 「ああ、現在、居合わせた中級魔道士が何とか進入を阻止しているが、長くは持ちそうも無い。」 「・・・分かりました、後はお任せ下さい、入り口に救急班を待機させて頂けますか。」 至極冷静にその女性魔道士は隊長に言ってくる。 「了解した、いや、しました上級魔道士殿。」 頷くと女性魔道士は指令車を出てゆく、それを見ていた隊長は、彼女の姿が見えなくなると近くの椅子に座り込んでしまう。 様々な危険を潜り抜けてきた隊長だったが、先程の女性魔道士の気に当てられてしまっていたのだ。 「あれが上級魔道士様の迫力と言う訳か・・・待てよ彼女確か、木村夏樹て名乗っていたな?」 傍の部下が隊長の言葉に反応する。 「はい・・・ま、まさか?」 「間違い無いだろうさ、上級魔道士の木村夏樹、そうか彼女が来てくれたのか。」 彼女の事を魔道士でない隊長もよく知っていたのだ。傍の部下に問いかける。 多くの上級魔道士が失敗した、史上最悪の暴走AI・カオスの封印を成功させ、その後も数々の暴走AI事件を解決してきた若き女性魔道士。 先程隊長が言っていた通り、上級魔道士の多くは自己の魔道の追求のみにしか関心を示さず、暴走AI事件など自分とは関係無い事だと思っている節がある。 その中で木村夏樹だけは率先して関わりを持ち、必要であれば今回のように赴いて来る事も珍しくない。 そんな彼女の前で上級魔道士の事を悪く言ってしまったのだ、もっとも気にしている様子は無かったが。 「なら問題は無いな、ただ後で謝罪しておかなきゃならないか。」 伝え聞いた話では、事件に関わる木村夏樹は上級魔道士の間では異端扱いされており、彼女の方もそういった魔道士達の気質にいい感情を持っておらず、両者の関係は最悪らしい。 普通なら魔道管理局から追い出されていそうなものだが、そうならないのは、木村夏樹が現魔道管理局長官の娘だと言われているからだと、隊長は知り合いの魔道士から聞いた事があった。 まあ”実の”でなく”義理の”方らしいが。 隊長は彼女が出て行った扉を見ながらそれを思い出していた。 「くっ・・・・」 アオイ・リンドバークは展開したシールドに受けた衝撃に呻く。 目を向ければ個体イメージを作り出して彼女の前にいる暴走AI。 数度の攻撃を受けアオイの身体は傷だらけでぼろぼろになっていた。 その日アオイは、妹へのプレゼントを購入する為にエアポート区画にあるショッピングセンターに来ていた。 彼女の妹が数日後に中級魔道士への昇級試験を受ける事になっており、その合格祝いの買う為だった。 まだ合格してもいないのに気が早いかもしれないが、アオイは、妹が自分より優秀な事を知っており、必ず合格出来ると確信していた。 だがその買い物中にアオイは暴走AIの襲撃に巻き込まれてしまったのだ。 咄嗟にBUを展開し戦ったが、彼我の能力差は歴然としており、今の状態まで追い込まれていた。 「うう・・・」 暴走AIが凶悪な爪を実体化させ、アオイの展開したシールドを砕く、そして追撃の一振り。 辛うじてBUがアオイの身体が引き裂かれるのを防いだが、衝撃までは駄目だった。 もう一度アオイはシールドを展開するが、AIはそれを避け、展開していない方向から一撃を見舞う。 最早意識を保っているのが精一杯のアオイ。展開していたシールドが消え、凶悪な爪が迫る。 BUもその一撃は防げそうもない事をアオイは自覚していた。ここまでかと急速に意識が落ちて行く。 自分が倒れれば閉じ込められた人々の運命は絶望的だ、それが何より悔しかった。 そして中級魔道士になった妹の姿を見れない事が何より残念だった。 (御免なさいエリカ・・・いい魔道士になりなさい・・・) 目の前に迫る爪、落ちて行く意識、アオイは妹にそう心の中で言葉を送った・・・が次の瞬間。 衝撃音が響き、迫っていた爪が何かに弾き飛ばされる光景がアオイの意識を呼び戻す。 「え!?」 AIは一撃を防がれた衝撃で数十メートルも吹き飛ばされていた。 そしてアオイは自分の正面に誰かが立っている事に気付く。 「あ、貴方は・・・」 アオイはその人物が自分と同じ女性で、同じ服装、BUを身に纏っているのを見て呆然と呟く。 一体何時現れたのかアオイには分からなかった、それほど唐突に目の前に立っていたのだ。 「大丈夫ですか?」 涼しげな声がアオイに掛けられる、気付くとその女性が自分の方を振り向いて見ている。 慈愛に満ちた表情を浮べたその女性に、アオイは非常時である事を忘れて見詰めてしまった。 「は、はい何とか・・・あ!?」 我に返り返事をしたアオイはその視線の先で、起き上がりこちらに再び襲い掛かろうとしているAIに気付き、声を上げる。 「危ない!!」 そのアオイの声に、立っていた女性は視線を戻すと杖を前に突き出し命令コードを発する。 「ウィンドプロテクト!」 先程アオイのシールドを易々と砕いた凶悪な爪は、いとも簡単に弾かれた。 ギャアア!!! だがその一撃はフェイントだった、もう一振りの爪がアオイの前の女性に振り下ろされる。 アオイが致命的な一撃を受ける事になったAIの攻撃だったが・・・・ ギェエエ!! 同じように防がれてしまい、またAIは吹き飛ばされていた。 「う、嘘?」 あの女性がフェイントに気付いたのは理解出来たが、その一撃を防げた事にアオイは呆然となる。 何故なら最初の一撃を防ぐ為にシールドを展開しつつ、フェイントに対しても展開したのだ。 つまり同時に2つの命令コードを実行した事になる。 もちろんアオイとて簡単な命令コードの並列なら出来ない事は無い。 しかしあれ程強力なシールドを展開する命令コードを並列で実行させる事など出来ない。そう、中級魔道士である自分には・・・ つまり目の前に立つこの女性は中級魔道士では無いという事になる。 「上級魔道士!?」 そうだとしか思えない、上級魔道士なら高度な命令コードの並列など簡単にやってのけるだろう。 ただしこのような状況下、生命の危険があるような場面で出来るというのは、並大抵の修練では無理な事はアオイでも分かる。 一方、吹き飛ばされたAIは埋まった瓦礫から浮き上がると、先程と違って距離を取って対峙する。 流石にAIの方も、自分が対峙する魔道士が容易なさざる相手と悟ったのだろう。そんなAIに対し、上級魔道士と思われる女性は一見無造作に近寄って行く。 だが彼女が全ての神経を研ぎ澄ましている事にアオイは気づく、そして発せられる気にも。 自分に対して発せられている訳でもないのに、アオイは身動きする事が出来なくなってしまっていた。 それはAIも同じらしい、アオイを嬲り者にした時の余裕など最早無かった。 固体イメージの実体化により、AIはその女性上級魔道士より遥かに巨大だが、押されているのはむしろ彼奴の方だった。 アオイの後ろで、固唾を飲んで成り行きを見ている人々さえも、今やどちらが優勢か分かるぐらいだ。 女性上級魔道士が更に近づくとAIも更に後方に下がるが、やがて壁際に追い詰められ停止する。 AIから数メートル手前で女性上級魔道士も歩みを止め、無言で見詰める。 どのくらい時間が経過したのかをアオイは認識出来なくなっていた、数秒なのか数分なのか。 ギィエエエ!!! 次の瞬間AIが絶叫を上げ、空中に数十個の爪を出現させ、目の前の女性上級魔道士に振り下ろす。 「「「やられる!??」」」 アオイを含めその場に居た者はそう思った、幾ら命令コードの並列が出来るといえ、あれだけの数で同時に襲われたら防ぎようは無いからだ。 だが女性上級魔道士はそんな状況にまったく動じた素振りも見せず、杖を構えて命令コードを発した。 「ウィンドプロテクト!!!」 そして凄まじい衝撃音が響き・・・AIは後ろの壁にめり込んで動けなくなっていた。 「あ・・・あ・・・」 最早アオイは意味の有る言葉を発する事が出来なかった、それほど衝撃的な事が目の前で起こったのだ。 あの女性上級魔道士はAIの全ての攻撃を防いだのだ、しかも、その反動で壁にめり込ませるぐらいの衝撃を相手に与えるほどの。 「ウィンドロープ!」 冷静に次の命令コードでAIを動けないように拘束する女性上級魔道士。 AIは抵抗するように身を震わすが、最早身動き一つ出来ない状態だった。 「クリスさん、拘束コード発動して下さい。」 『OK夏樹、拘束コード発動、強制アクセス開始。』 杖に組み込まれているAI、BTS(バトルツールシステム)を司る、が魔道士の命令を実行する。 『強制アクセス完了、該当AIのコントロールを把握、こちらの支配下に置きました。』 それまで拘束から逃れようと抵抗していたAIは動きを止め、固体イメージ化を解除した。 「それでは封印をお願いしますクリスさん。」 『封印を開始・・・完了です夏樹。』 固体イメージが消え、唯の光体になっていたAIは、急速に光を失い、やがて上級魔道士の持つ杖にある青い球体に吸い込まれる。 「封印完了を確認、お疲れさまクリスさん。」 『ええ、夏樹もお疲れさまです、見事な戦いでしたよ。』 「クリスさんのお蔭だけどね、そうだ、救急班に来てくれるように連絡を。」 張り詰めた気が消え、アオイが初めて見た時の慈愛溢れる笑みを上級魔道士が浮かべる。 それを見たアオイは一気に緊張が抜け、その場に座り込んでしまう。 「終わったの?」 「ええ終わりました、貴女もお疲れさまでした。」 アオイが思わず呟いた言葉に、先程の涼やかな声が答えてくる、思わず見上げる先には・・・ 近づいて来た上級魔道士が居た、そして伸ばされてくる手。 思わず握り返したアオイを上級魔道士は手を引いて立たせてくれる。 「貴女のお蔭ですね、感謝します。」 「え、いや貴女が居なかったらどうなっていたか・・・私なんて。」 お礼を言われアオイは手を離して横に振り否定する。それもそうだろう、彼女も他の人々もこの上級魔道士が来てくれなければあの暴走AIに皆殺しにされていた筈だと思ったからだ。 「そんな事ありませんよ、僕が着くまでAIを抑えていてくれたのは貴女じゃないですか。」 上級魔道士は首を振ってアオイを見ると、優しく言ってくる。 「貴女はそれを誇って良いはずです、違いますか?」 その言葉にアオイは胸が熱くなり、涙が溢れそうになる。 目の前の上級魔道士はアオイの行動を評価してくれているのだ、自分のやった事は皆に誇れる事だと。 「あ、ありがとうございます・・・そういえば上級魔道士様ですよね、私は中級魔道士のアオイ・リンドバークです。」 姿勢を正し、自分の杖を捧げるようにして上級魔道士に挨拶をするアオイ。 挨拶された上級魔道士は杖を掲げるようにして答える。 「はい、上級魔道士の木村夏樹です。」 「木村上級魔道士様ですね・・・え、えええっ貴女が!?」 上級魔道士の名乗りを聞いたアオイは思わず叫んでしまった。 それはもちろん先程の隊長より詳しく木村上級魔道士を知っているからだ。 木村夏樹上級魔道士。 魔道士であれば彼女の事を知らない者など居ないと言っていいだろう程の存在だ。 史上最悪の暴走AI・カオスの封印を、まだ正式に魔道士になっていない幼い頃に成し遂げた。 そして魔道士に任命された時には、初級や中級を飛び越えて上級魔道士になった。 上級魔道士になってからは、多くの暴走AIや失われた魔道遺物の封印を成功させた。 そんな数々の伝説を持つ上級魔道士が今まさに目の前にいる木村夏樹だったのだ、アオイが驚くのも無理は無いのだ。 「いえそれほど驚く事では・・・」 『夏樹、魔道管理局・長官から通信が入ってますよ。』 「リベアさん、いえロックワード長官から?」 驚愕しているアオイを更に驚愕させる名前が、木村上級魔道士の持つ杖のAIから放たれる。 リベア・ロックワード長官。木村上級魔道士やアオイの所属する魔道管理局の最高権力者。 上級魔道士の更に上の存在である特級魔道士であり、アオイにしてみれば雲の上の存在どころではない。 その雲の上の存在以上であるロックワード長官が、上級魔道士といえども個人に直接連絡してくる事など聞いた事が無い。 「ちょっと待ってくれますか。クリスさん、内容は?」 アオイに待つよう頼むと、木村上級魔道士はAIのクリスにロックワード長官からの通信内容を訊く。 『今回の任務の結果確認ですね。』 「では、封印は無事完了、幸いな事に死者は無し、そう伝えて下さい。」 『わかりました夏樹。』 戸惑っているアオイを余所に、木村上級魔道士は何でも無いように振舞っている。ロックワード長官からの通信にも緊張など無く対応している姿しか無かった。 (そういえば、木村上級魔道士はロックワード長官の義理の娘さんだって話だったわよね。) 先程の隊長同様、アオイもそんな話を聞いた事があったのだ。 『報告は完了です、長官からお褒めの言葉を頂きました、後明後日の件も大変でしょうがお願いします、との事です。』 「了解。ああ待たせてすいません。」 呆然と立っていたアオイに木村上級魔道士が話し掛けてくる。 「あ、いえ大丈夫です。」 色々あってアオイは眩暈がしそうだが、何とかそう答える。 「おい、こっちだ早くしろ!」 やがて連絡を受けた軍の救急班が入って来て、負傷者への処置を始める。 「木村上級魔道士殿、お疲れさまでした。」 救急班の後から現れた隊長が、木村上級魔道士の元に来て頭を下げる。 「いえ、僕は職務を果たしただけですよ、皆さんのようにね。」 隊長に顔を上げさせ木村上級魔道士は答える。 「それでは僕は戻ります、後始末を押し付けて申し訳ありませんが。」 「いえ、それは我々の仕事ですから木村上級魔道士殿はお気になさらず。」 木村上級魔道士は隊長の言葉に頷くと、アオイに呼びかける。 「リンドバークさんも早く治療を受けて下さいね、それではまたお会いしましょう。」 「はい、木村上級魔道士様。」 2人に会釈して木村上級魔道士は出て行った。 「聞いた通り、上級魔道士殿にしては腰が低いな、おっと、アンタの前でそんな事言ったら不味いか。」 隊長がアオイを見て、気まずそうに言う。 「別に構いませんよ・・・確かに木村上級魔道士は、私達下級魔道士達にも普通に接してくれると聞いた事がありますから。」 「なるほどね。」 大概の上級魔道士は自分より下の魔道士達どころか魔道力を持っていない人々に対して、傲慢であり、その言動は何時も上から目線だ。 しかし木村上級魔道士にそんなところが無い、アオイ自身も最初聞いた時は疑ったものだが、当人に直接会ってそれが事実だった事を知った。 「まさに理想の上級魔道士です、もちろん女性としても憧れます。」 両手を組みうっとりした表情を浮かべながら言うアオイに、隊長は引き気味になる。 (そう言えばあの上級魔道士、女性のファンが多いみたいだな。) 隊長は、自分に木村上級魔道士の事を教えてくれた女性魔道士も同じだったなと思い出し、苦笑する。 まああれほど能力が高く、しかも人として出来た女性なら、そうもなるだろうなと隊長は思う。 「・・・でも、またお会いしましょう、ですか、それは無いでしょうね。」 夢から覚めたようにアオイは力無く微笑む。 相手は上級魔道士だ、そう気軽に会えるものではない事くらいアオイにも分かる。それは多分、社交辞令で言っただけだと。 しかしアオイはこの後、自分の妹を通じて木村上級魔道士と交流を持つ事になるとはこの時は思ってもいなかった。 〜報告書〜 16:00 シティエアポート区画における暴走AI事件解決。 |